書評①:『霧が晴れた時-自選恐怖小説集-』
記念すべき書評の第1回目は、小松左京著『霧が晴れた時‐自選恐怖小説集‐』。
私はミステリー・推理・SF系・ホラーの小説が好きで、本屋に行ってもついついそれ系の本ばかり買ってしまうのだが、そんなSF系の中でもこの本は前々からずっと欲しいと思っていた一品。
もしかしたらご存知の方もたくさんいるかもしれないが、そう、あの「くだんのはは」が収録されている短編集がこれ。
極力ネタバレは避けて感想をつづっていくので、興味がないという人もお目を通していただけると幸いだ。
小松左京著『霧が晴れた時-自選恐怖小説集‐』収録話
15話も収録されていることで重たそうに感じる人もいるかもしれないが、一つ一つの話はそれほど長くないのでスラスラ読むことができる。
あらすじ感想
「すぐそこ」
一人の男が道に迷い帰り道を聞くが・・・
もうこういう場所はなくなりつつあるけど、迷い込んでしまったらやだなと感じるじわじわ系ホラー。
「まめつま」
夜中に赤ん坊の様子がおかしくなって・・・
話自体はありそうだが、それよりも母子関係、夫婦関係がリアルに描写されていてそちらのほうが怖い。
「くだんのはは」
戦時中、逃げた先の大邸宅には不思議な部屋があって・・・
大本命の「くだんのはは」。ただ期待値が高すぎたせいで若干消化不良。面白いけれど怖くはないかな。SF要素の強いホラーという印象。
「秘密(タブ)」
兄夫婦のもとを訪れた妹は家にあったほこりの被った神像を拭くが・・・
ささいなことをきっかけに日常が変わっていく系の話。こんな秘密は共有したくない。
「影が重なる時」
ある日「自分が部屋にもう一人いる」という友人から電話がかかってきて・・・
『世にも奇妙な物語』で映像化された話の一つ。戦争を経験した小松先生らしい話。
「召集令状」
ある日、若い社員のもとに召集令状らしき紙が届くが・・・
また戦争関連の話と思いきや、思いのほかSF要素の強い結末。好き嫌いが分かれそう。
「悪霊」
数か月ぶりに連絡を取ってきた日本古代史にのめりこむ滝田という男に不安をつのらせる主人公だが・・・
日本古代史に興味のない私は、途中のうんたらかんたらで挫折しかけた。
「消された女」
ある日、空き部屋であるはずのホテルの一室に女がいるという電話が入り・・・
まさにSFといったお話。アガサ・クリスティのあの書籍名を思い起こさせる。
「黄色い泉」
妊娠中の妻と夫が道に迷ってしまい・・・
これも、日本の古代の伝記にまつわる話。若干年齢規制がかかりそうな表現あり。
「逃ける」
昔世話になったポン引きに再会した主人公は・・・
ポン引きとは、主に売春を斡旋する人たちのこと。よくあるオチだがしんみりとしないところがSFっぽい。
「蟻の園」
毎日が単調と嘆く警察官たちは、共通してあるマンションの夢を見るというが・・・
今でこそよくある話だが、これを50年以上前に書いた小松先生はやはり天才。
「骨」
男が井戸を掘ると、次から次へと土器や人骨が出てきて・・・
想像したら物悲しくなるような話。まさに「骨」。
「保護鳥」
立ち寄った外国の寒村で手厚い歓迎を受けるが・・・
こんな鳥は厭だ。
「霧が晴れた時」
家族で郊外の山にハイキングに行くが・・・
本著の題名にもなっている話。このあとどうなったのだろう・・・
「さとるの化物」
あるバーで人の心が読めるという男が話しかけてきて・・・
なるほどそっちか、となる話。これも「世にも奇妙な物語」で実写済み。文字で読むとまた違った印象になりますな。
まとめ
どれもこれも昔に書いたとは思えないほど新鮮さがある話ばかり。すべての話が好きになれなくても、一つや二つお気に入りがきっと見つかるはず。ぜひ、場面を頭に思い浮かべながら読み進めてほしい短編集。
はじめましてのご挨拶。
はじめまして。マリモです。
このブログでは、クラウドワークスを通じてのWEBライターとしての仕事や、その他日常のあれこれ、日々思っていることなどを思うままにつぶやきます。
本・映画・音楽の感想なども書きますが、それらはすべて個人の意見です。
広い心で読み進めてくださると幸いです。
以上